「乙嫁語り」を読んだマンガの評価、感想、レビューです。
19世紀半ば、中央アジアのトルキスタンあたり舞台に若いお嫁さん事情を描いた「中央アジアにいた乙嫁たち」の物語。「乙嫁語り」は「エマ」でも有名な森薫による漫画。もうすっかり看板漫画家になってるので、いまさらだよねw。
森薫特有の上品な空気感と刺繍模様や風景など精密な描き込み、巧みなストーリーづくりに引き込まれる作品です。雑誌が「ハルタ」から「青騎士」に替わったせいか最近ワイド版が愛蔵版コミックとして刊行されたみたいですね。
「乙嫁語り」は超メジャー漫画なので知らない人の方が少ないんじゃない?
担当編集が新刊雑誌に移動したんで一緒に連載雑誌移籍したらしいんですが、今後の単行本はどうなっちゃうんだろう? そこだけ心配ww。
「乙嫁語り」は最初の主人公カルルクとアミルを中心としてる漫画なんですが、簡単にザックリこんな話って説明しようとすると難しいw。他にもいろんな女の子キャラが出てきて、乙嫁は若いお嫁さん、お嫁さん候補全てなので、結構フワッとした括りとニュアンスの物語です。巧みなストーリー展開ではあるんですが、絵で見せる部分もあって、ストーリーがあるっちゃぁあるし、無いちゃぁ無いような、行間を描いてるようなマンガなので、「どこがおもしろいの?」と聞かれると何とも説明がしづらい漫画ですよねw。
でも面白いのは確かなのよww。
森薫作品は、まさかの舞台を選び、読者が想像力を働かせることが不可能なところに手を突っ込んで物語が進んでいくんだよねw。ストーリーの展開は最終的な到達点が見えにくいので、もしかしてシルクロードの日常系なのかな?ある意味のんびりした物語ですよww。
しかし中央アジアということで、放牧や狩猟は盛んです。なかなか雄々しいアクション描写もあって、意外とエロティックな雰囲気もあるんだけど、どこかたくましい女性が多いですかねww。
森薫の漫画の魅力は、あの美しい壮大な絵と、常軌を逸したほどの描き込み。そして全体に流れる上品さですよね。特に細部までじっくり観察して描かれているであろう描き込みは、もう、ほとんど病気ww。前作「エマ」の時のレースの描き込みも異常だったけど、今回民族衣装なんて全部手描きだぜよww、頭おかしいってww。
日本人にとって馴染みがほとんどない「中央アジア」を舞台にしているからこそ、幻想的で異質な文化圏が心地よい「非日常」を与えてくれる珍しい上質な漫画です。
正直言って、少しエロティックな表現のある漫画ではあるんですが、このマンガの本質って、男性向け漫画の振りをした女性を描いた女性向け漫画だと思います。エロティックさもむしろ女性受けしそうなエロティズムだしね。多分、男性諸君より女性がハマる漫画かもしれないですよww。
アニメ化や映像化されてないので、今回は残念ながら漫画のみの紹介です。
正直アニメ化はしないで欲しい、というか、多分無理ww。
最近は中国市場を意識したアニメづくりが主流なので、手描きだとお金がかかってる感が無いので、一般中国人には観てもらえないというジレンマがあるそうです。実現したら3Dアニメになっちゃうかもww。まあ、3Dでもどう考えてもあの描き込みを表現できるとは思えないので無理だろうねww。
ちなみに私は森薫の初期からのファンなので、無条件におすすめですww。
ぜひ大人こそ読んで、乙嫁たちにホッコリ癒されてください。
「乙嫁語り」あらすじ
舞台はおそらく19世紀半ば、中央アジアのトルキスタンあたりの物語。正確には物語の中でも書かれてはいないんだけど、私の推測ではシルクロードのその辺りなんじゃないかと思います。
20歳の美しい娘アミルが嫁いだ先は若干12歳のカルルク。遊牧民と定住民、8歳の年の差、生活習慣の違いなど、中央アジアという異文化圏の物語なのにさらに部族異文化間で二人はちゃんと結ばれるのか?という二重構造が面白いw。
確か乙嫁って弟の嫁の意味で、若い嫁さんを示唆する言葉だったと思うんだけど、ヒロインのアミルは20歳、この時代の中央アジアの女性で初婚だとかなり遅い方なので、ん? と思ったんだけど、まあ、シチュエーション的にはカルルクは弟なので間違ってはいないんだよね。作者も若い嫁さんじゃなくて、綺麗で美しい女性って意味で使っているって言ってたから、まあ、あんまり気にしてなかったんだけどね、まさか次々に乙嫁が現われるとは思ってなかったですわww。
そう、まさかまさかの同時進行のオムニバス形式だったんだよね。
最初読んでる時にはこういう構造になっていくとは思ってもいなかったですわww。
一応カルルクとアミルを軸にストーリーは展開してくんですが、全く出番が無かったり、話がポンと飛んで違う場所の話になったりと、それぞれの乙嫁のストーリーが1~2巻編成で展開していきます。
多少血生ぐさいストーリーも混ざってきますが、基本中央アジアのコミカルなほのぼの日常系ですw。
19世紀の世界情勢が絡んでくるので、今後どうストーリーが転がっていくのか楽しみですよ。
とまあ、ネタバレ無しでストーリーを説明するとこんな感じかな?
中央アジアの幻想的な世界観と民族衣装と人間関係の面白さにハマってしまうと、止められないやめられないww。
このマンガの魅力に完全にやられちゃうと思うよww。
「乙嫁語り」はやっぱりあの精密な手書きの描き込みを楽しむべきw
アメコミなんかだと、どれだけ描き込まれているかでアート作品販売としての価値が上がるという変な現象が起こるんですが、ぶっちゃけこの「乙嫁語り」ではある種の執念のようなこの描き込みはぜひその方式を採用してほしいと思うぐらい素晴らしいですw。
もちろん空気感やちょっとコミカルなストーリー、キャラクターの面白さが際立つからこその描き込みなんですが、この行間を読むような面白さはちょっとあまりないと思います。
私は前作の「エマ」からの森薫ファンなので、できれば「エマ」から読んでもらうと作風が理解できるのでおすすめです。もっと前の「シャーリー」や短編までとは言いませんw。作風が完成したのはやっぱり「エマ」でだと思うのでww。
もちろんエマも全巻デジタルじゃなく単行本として初版本揃えてるぜww。こちらはアニメにもなってるんで知ってる人も多いよね。エマは19世紀末のイギリスが舞台で貴族とメイドのすれ違い恋愛ストーリー。
初期の頃はストーリーの面白さと空気感、キャラクターの面白さで読ませてるんですが、画力が上がってきたらガンガンヤバいぐらいの描き込みになっていくのがよく分かりますw。
この頃はゴリゴリのメイド服描き込みとレース描き込みがすごかったww。全体を漂う上品さは最初から健在。もしかして民族衣装マニアなのかな?
完全にエマで画風と方向性が完成したと言っていいと思うので、是非一読しておいてもらいたいです。
残念ながらアニメの方は権利の問題でVODでは観られないみたいですね。
観たい方はDVDで探してみてください。
ちなみに、この作風の上品さは、作者が持って生まれたものだと思います。
後から身につけられるものじゃないと思うからね。
ここで私が思うのは、ギャップです。
私は作者の森薫に会ったことが無いので本当のところは分からないですが、おそらく、作品のイメージとは全く違う人なんじゃないかと思いますね。
「作品と人格と嗜好は別」というのが私の持論。全くイメージが同じという人の方が圧倒的に多いんですが、そういう人って自分の想像以上のことができないことが多いんで、いまいちパッとしない人が多いんだよねw。なぜか人って、複雑な一人の人の全てを同一化してカテゴライズしようと押し付けてくるんだけど、なぜなんだろうね?
学生時代も芸術系でプロを目指している人でさえ、その傾向は強烈で同一視することに疑問をもたない人が多くて、だいぶ悩まされましたよww。まあ、そういう人は一人残らずプロにはなれてないので、あながち間違ってなかったと思ってるんだけどww。
おそらく作風と作者ご本人のギャップは相当ある人なんじゃないかなぁって、なんかそんな匂いがプンプンしますよww。むしろ真逆の印象なんじゃないかな? 離れてれば離れてるほどいい作品ができるって人がホント多いからねww。
ネタバレ無しで書きましたが、ホントに秒でページをめくるのがもったいないような絵柄の漫画です。
ぜひ一度目を通してみてください。
ちなみに私はパリヤが好き♪
「乙嫁語り」レビュー まとめ
アニメ化や映像化はされてないけど多分無理だろうなぁw、という作品ですが、異国情緒と非日常を楽しめる漫画の一つだと思います。
面白さを短く端的に紹介できない漫画ばっかり紹介してますが、これもその一つだと思ってくださいw。
ストーリーを説明するのが難しい漫画ですが、乙嫁それぞれのキャラクターがとても魅力的で、まさに森薫の才能大爆発という漫画です。まだ読んでないなら、人生を確実に損してると思いますよww。
気になる人は、ぜひ一度読んでみてください。
何度も読み返したくなる不思議な漫画です。